名古屋地方裁判所 平成4年(わ)230号 判決 1992年6月15日
本籍
奈良県五條市牧町一二四六番地
住居
愛知県豊田市聖心町三丁目一六番地五
会社役員
山口正晃
昭和二二年三月三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官遠藤浩一出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金一二〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときには金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、愛知県碧南市天王町一丁目五八番地において「山口工業」の名称で工場設備修理業を営むとともに同県豊田市広久手町一丁目一番地広久手マンション一〇六号室において「キャンディーコール」の名称でテレホンクラブを営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、領収書、請求書等の証拠書類を破棄したり、仮名及び借名の預貯金を設定するなど正規の所得税額との差額一五九一万五六〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 第一回公判調書中の被告人の供述部分
一 被告人の検察官に対する供述調書
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(平成二年六月八日付け及び一二日付けのものを除く全一九通)
一 大蔵事務官作成の各査察官調査書(平成二年一二月二七日付けの三通(記録証第一八二号ないし第一八四号とそれぞれあるもの)を除く全二六通)
一 大蔵事務官作成の証明書(記録証第一〇六号とあるもの)
一 名古屋国税局査察管理課管理係長稲垣孝司作成にかかる「納付状況に関する回答書」と題する書面
一 山口紀子の検察官に対する供述調書
一 山口紀子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 検察事務官作成の捜査報告書
判示第一、第二の事実について
一 大蔵事務官作成の平成二年一二月二七日付け査察官調査書(記録証第一八二号とあるもの)
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和六二年分)
一 大蔵事務官作成の証明書(記録証第一〇三号とあるもの)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和六三年分)
一 大蔵事務官作成の平成二年一二月二七日付け査察官調査書(記録証第一八三号とあるもの)
一 大蔵事務官作成の証明書(記録証第一〇四号とあるもの)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成元年分)
一 大蔵事務官作成の平成二年一二月二七日付け査察官調査書(記録証第一八四号とあるもの)
一 大蔵事務官作成の証明書二通(記録証第一〇一号及び第一〇五号とそれぞれあるもの)
一 鈴木肇の検察官に対する供述調書
一 鈴木肇の大蔵事務官に対する質問てん末書
(法令の適用)
判示所為 所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑とを併科)
併合罪加重 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情最重の判示第二の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき刑法四五条前段、四八条二項目
労役場留置 罰金刑につき刑法一八条
執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件においては、ほ脱額は合計五五七三万七七〇〇円に及び、その態様も、税務当局の捕捉を免れるべく、領収書、請求書等の証拠書類を破棄したり、仮名及び借名の預貯金を設定するなどの不正な手段をとったものであって悪質であるが、他方、前記ほ脱については、延滞税、重加算税もあわせて支払いが済んでいること、現在は顧問税理士の指導関与を受け経理体制を整え適正な税申告をおこなっていると認められること、被告人は本件犯行を十分反省し二度とかかる犯行を繰り返すことはない旨誓っていること、被告人には風俗営業等取締法違反で罰金刑に一回処せられたことがある以外は前科がないこと等の事情を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 大渕哲也)